千代子は、自分のラジオを持った13歳の頃から、クイーンが好きでした。
We will rock you の収録されたクイーンのアルバム「世界に捧ぐ」も発売当初、買いに行ったのです。
初めて日本武道館でライヴに行った時の感激もひとしおでした。
やがて千代子も社会人へ。世の中は、好景気。ものは、作れば売れる時代でした。けれど、一介の事務員として働く千代子にとって、あの頃はひたすら残業をしていた時代だったのです
疲れてうちに帰り、テレビをつけた時、このWe will rock you がコマーシャルの曲として使われているのを初めて見ました。確か、キリンの炭酸飲料のコマーシャルでした。
自分と同じ曲を聴いて育った世代の人が、コマーシャルの曲目を決める立場で働いている。私は、なにをやっているんだろう。
千代子はこのコマーシャルを見て、華々しく活躍する同級生を眺めたような気持ちになりました。
二十代の後半でした。千代子は迷いの多い日々を送っていたのです。