最近、高齢になったら無理に友達を作らなくてもいい、孤独は悪い事ではないという主旨の本を、本屋さんでよく見かけます。
千代子は、そんな本に何かモヤモヤしたものを感じていました。
これは何だろうと思う時があります。
クネオ君と再会するまで、千代子は寂しい感情を外に見せずに振る舞っていました。
それは、社会人の振る舞いとして、当たり前の事です。
しかし、クネオ君がうちに来た時、関東で大きな地震がありました。
その時、千代子は、人がそばにいるとこんなにも安心するのかと思いました。
当時、会社は通勤と勤務で長時間を費やし、家に帰るとシャワーを浴びて寝るだけの生活でした。クネオ君と結婚したい。しかし、そのためには退職しないと、健康に不安を感じる。
30年以上在籍した会社を退職するというのは、なかなか決断できない事です。千代子は、今後について悩んでいました。
その時に起きた地震です。
クネオ君といる時の安心感は、お金で買えるものではありません。
千代子は、その時、退職を決断しました。
大きな決断です。社内の誰に相談する事もなく、人事権のある方に、一か月後に退職したいと報告しました。
人と群れてはいけないと説く方は、それを実践するために失うものがあってもいいという覚悟の上で説かれているのでしょうか。
千代子は、あの時の自分の選択が正しかったと思える様な日々を送りたいです。