千代子は、初めてラジオを自分のラジオを持ったのは、確かNHKの英語「基礎英語」が英語の授業の副教材だったのが、きっかけでした。
しかし、千代子は、そのラジオから、自分をとりまく世界の外を想像する様になったのです。
渋谷陽一さんのラジオから、洋楽を聴き始めたのでした。
時々、特集される「懐かしの60年代特集」など、ワクワクして聴いていたのです。
このジャニス・ジョプリンによるサマータイムも、その時初めて聴きました。
リスナーからのリクエストも、興味深いものでした。この曲を聴くと、懐かしさと少し苦い後悔を感じる、なんていう女性の投書が読まれたりすると、千代子は、何だかかっこいい、なんて思っていたのです。
おそらく高円寺に住み、絞り染めのTシャツをパートナーとペアで着ている。タバコは、ふたりともハイライト。しかし、現在は、彼女もパートナーも、そんな事はなかったかの様な、堅実な生活を営んでいる。とか、ひとりで妄想大会をしていました。
この曲は千代子に、そんな想像を掻き立てさせるのです。
平和でつるんとした中学生活を送っていた千代子は、ラジオを聴く事で、自分の知らない世界、見た事のない世界が、この世にはあるのかもしれないと感じていました。