千代子は、今日、観に行きました。
学生の頃、チェーホフの戯曲は読んでいました。
時代の流れの中で、大切にしていた桜の園を失う人の話、という事しか憶えていない状態でした。
舞台で観て、今、観て良かったと思いました。
家族が大切にしていた桜の園がそして家屋が、時代の変化に気づく事もなく、お金について真剣に考える機会もないため、失ってしまう。買い取ったのは、かつて自分の家で使用人として働いていた人間の息子。
時代の大きな変化の中、嘆くだけの人間、なすすべもなく失意の中を生きる人間、失った後の生活に希望を見いだす人間、そして、親を超える様に必死に働き、桜の園を得たのに、誰からも自分の話を聞いてもらえない孤独を抱える人間。
外国の一家の家の中だけの話です。主要な登場人物は、約8人です。
小さな世界の話を丁寧に細かく積み重ねて描く事で、大きな、国を超えた共感を呼ぶものとなっている事に、改めてこの戯曲の凄みを感じました。
千代子が一番、はっとしたのは、桜の園が競売に掛けられるか否か、皆が待つシーンです。皆、張り詰めているはずなのに、その時、カーニバルの様な鮮やかな衣装を着て、ダンスパーティーを行っていました。
千代子もかつて、このままでは自分が壊れるのではと危惧した時、その状況をあたかもネタであるかの様に、電話で親しい人に、機関銃の様に話し続けたのです。
このパーティーのシーンは、何だろうと思いながら、観ていて、それが桜の園の結果を待っている場と知った時、その時の事が思いだされました。
観客は、シルバーの髪の人と若い人、半々でした。
観る人によって、様々な解釈がされる芝居だと思いました。
この戯曲は、時の流れに淘汰されずに残り続ける、力強いものだと感じました。
この芝居も演者も、すばらしい仕事をされる方なのだと思いました。