1962年生まれ、かな入力千代子のお天気日記

あの、自分が還暦を過ぎた事が自覚できないのです。まだ知りたい事、知らない事が沢山ある気がします。

TUGUMI 書く事への憧れと葛藤と

TUGUMI  吉本ばなな著、1989年発表。

この小説は、私が27歳の時に発表されたものです。作者の吉本ばななさんは、1964年生まれ、私より二歳年下です。

主人公のつぐみ、彼女の姉の姉の陽子、まりあ、恭一、四人の若い人の、海辺を舞台とした、物語です。

つぐみの小意地の悪さの根底にある、病弱である自分への虚勢が、若い人ならではの感じがしました。こんな風に、自分の欠けている部分がわかっていながら、生きている。そんな彼女の姿に私は、親近感を憶えたのです。

これは、私たちの話だ。

小説を読んで、そんな感想を持ったのは、この小説が初めてかもしれません。作者の吉本ばななさんが、自分と年齢が近い事も、私には、大きな出来事でした。

私も、自分で物語を書きたい。この本を読んだ後、私の中には、いつしかそんな気持ちが芽生えてきました。

やがて、私は、小説を闇雲に書き始めました。新人賞を募集している文芸誌を買い込み、自分の書くものを受け入れてくれるのは、どこか探し始めました。しかし、何作書いても、一次選考にもかすりもしません。自分が選ばれない事が続くのは、それが何であれ、辛いものです。私は、次第に小説を読む事が、苦しくなってきました。どれを読んでも、「ああ、こんな手があったのか」「ああ、私の方がアイディアは先に浮かんだのに」そんな風に小説を読み始めたのです。

そこで、私は「もうこの作品が一次選考を通過しなかったら、諦めよう」そんな気持ちで、渾身の力を振り絞って、一作書き、送りました。

それは、一次選考を通過しませんでした。

この時やっと私は、自分に才能がない事を認めました。書き始めてから、十年近くかかりました。

今、私は、小説を楽しんで読んでいます。私は、小説愛好家として生まれ変わりました。