千代子は、子供の頃、団地に住んでいました。
夜はよく、窓の外を眺めていました。向こうの棟から、同じ形、同じ色の光が浮かび上がる。けれど、あの小さな光のひとつひとつの中には、自分のうちの様な、おとうさん、おかあさん、弟のいる家族がいるというのが、何だか不思議な感じがしたのです。
また、子供の頃、クリスマスに母が、高さ30センチ位の小さなクリスマスツリーを飾りました。そのツリーには、豆電球も飾りました。それは、とりどりの色のプラスチックを被せたものです。小さなネオンが、光を放っていました。千代子も弟も、その光を眺めながら、うとうと眠りにつきました。
街の灯りを聴くと、そんなぼんやりとした、幼い頃の思い出を思い出します。今でも幸せなはずです。それなのに、一人で部屋でこの曲を聴いていると、鼻にツーンと来るものがあり、気が付くと涙が出てしまいます。